研究課題/領域番号 |
18350004
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
|
研究分担者 |
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (20281107)
岡村 恵美子 京都大学, 化学研究所, 教授 (00160705)
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 助教 (40293948)
|
キーワード | 膜 / NMR / NOESY / コレステロール / DPPC / DMPC / 曲率 / 緩和時間 |
研究概要 |
膜は、生体組織の「内」と「外」を分け、呼吸・栄養補給・代謝に必要な物質の輸送と分配を司る。本研究は、生体膜およびモデル膜における物質透過・分布の非侵襲的なその場測定の方法論を確立する。動的多核NMR法によって物質の捕獲・透過のダイナミクスを解析するとともに、コレステロールの膜内および溶液中での溶存状態を解析する。本年度は、dipalmitoylphosphatidylcholine (DPPC)のリン脂質二分子膜について、大きく曲率や温度を変えて、NOESY測定を行った。膜の曲率によって、温度依存性が異なることを見出し、また、曲率依存性そのものも決して単調ではないことを明らかにした。温度上昇に伴う相関距離の減少と原子間距離の減少との競合によって生じる現象である。生体膜モデルとして、ミセルがしばしば用いられているが、曲率依存性の解析は、モデル膜の妥当性を確立する上での大きなステップである。さらに、膜中でのコレステロールについて、NOE測定を行った。膜中のコレステロールは、運動性が悪く、NMRシグナルの取得そのものが、コレステロールの研究における大きな進展である。膜中でのコレステロールが、OH基を水相に向けた配置にあることを見出した。また、研究の進展の中で、spin-echoを用いて、広幅の膜信号の分離度を上げる新パルス系列(transient NOE-SE法)を案出した。直径の大きな膜に対しても適用可能であり、より現実の生体膜に近いモデル膜の研究に有力である。
|