研究概要 |
超原子価ラジカルは、広範な気相や溶液反応で反応中間体として重要な役割を果たしていることが、次第に認識されつつある。本研究では超原子価ラジカルの反応特性を系統的に調べ、生体反応を含む広範な化学反応に果たすラジカルの役割を解明することを目的としている。この目的を達成するために、初年度はNH_4に注目し、反応中間体としての重要性を検討するために、以下の研究を遂行した 1.NH_4+錯体イオンの生成と構造:レーザー光イオン化で生成したNH_4+とベンゼン蒸気を混合して真空中に噴出させ、生成した錯体イオンを断熱膨張で冷却しうる新しいクラスター源を試作し、ベンゼンとの錯体の安定性について調べた。その結果、NH_4+・ベンゼン錯体は、アンモニアクラスター内で安定に存在することが分かった。現在、錯体の電子励起状態でのNH4イオン濃度の向上を計るとともに、錯体の光解離スペクトルの測定を進めている。また錯体の構造を調べるため,光パラメトリック型の赤外波長延長システムを導入し,赤外スペクトル測定の準備を進めている。また、構造情報のより的確に得られることが予測される核磁気共鳴の導入を計るため,気体NMR法の検討を行った。 2.オキソニウムラジカルの安定性:CH_3OH_2ラジカルの安定性を調べるために、(NH_3)n(Ch_3OH)m@Hを分子線中に生成し、H原子がNH_3とCH_3OHの何れに付加するかを検討している。ここではNH_3とメタノールの混合気体を真空中に噴出し、レーザー光解離法によりラジカルクラスターを生成している。現在、フェムト秒レーザー分光法と光イオン化法によりクラスターの電子状態を調べ、超原子価ラジカルの特性の検討を進めている。今後、赤外スペクトルの測定により、H原子の存在状態を明らかにする計画である。 3.NH_4はアルカリ原子と等電子構造を持ち、クラスター内で自発的にイオン化することが予測される。この特性の理解を深めるため、Na_2の水クラスター内でのイオン化過程を、光電子分光を用いて検討した。
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