以前、我々は連続掃引フーリエ変換型分光器を用いた時間分解分光法をマイクロチップ・コンピューターSXを用いて開発した。このシステムは、多重サンプリングにより、通常の分光器の30-64倍の時間分解データを高い波長分解能で一気に取得できるのが特徴である。本研究においては、新たに回路集合体を用いて時間分解分光を行う装置を開発し、以前のSXを用いたシステムに比べて時間応答性などが改善された。化学反応において重要な役割を持つフリーラジカルやイオン種の時間分解スペクトル測定は、反応速度、衝突脱励起の研究にとって必要で、当研究室ではこれまで主にフーリエ分光法を用いた発光分光法で行ってきたが、本研究では吸収法を適用するために、申請時、量子カスケード(QC)レーザーとディスクレーザー励起OPO赤外レーザーを吸収測定用光源として用いることを考えていたが、再検討した結果、チタンサファイアレーザーで近赤外領域を発振させ、intracavityの実験を行うことにした。そのため高繰り返し(10kHz)で最大10mJ出力の527nmのレーザーを購入し、チタンサファイア結晶に照射した。チタンサファイアレーザー部分はすべての部品を購入し、組み立てた。今後、赤外光を差周波方式で発振させるために、チタンサファイレーザーで2波長同時発振を実現して、非線形素子に入射し、赤外光を得る予定である。また量子カスケードレーザーは出力〜100mWのものをサンプルセルに照射後、フーリエ変換型分光器に導き、吸収スペクトルを観測した。量子カスケードレーザーの発振波長域が制限されているためテストはアレン分子で行い、通常の光源を用いた分光に比べてよい信号対雑音比を得た。
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