研究概要 |
本年度,実験に関しては高振動励起分子の生成・検出および衝突素過程を追跡するためのシステム構築を,また,理論計算に関しては高振動励起分子の緩和速度計算コードの新規開発を目的として以下のとおり実施した。 (1)光解離用エキシマーレーザのパルス安定性を向上させるために,サイラトロンおよび電源制御モジュールを設置し,デジタル遅延パルス発生器を用いて,解離・検出2レーザの照射時間間隔をns(10^<-9>s)オーダーステップで制御する機構を開発した. (2)オゾン(O_3)の紫外光解離266nmにより生成するO_2(X^3Σ^-_g,6【less than or equal】v【less than or equal】15)の単一高振動励起準位を,B^3Σ^-_u-X^3Σ^-_g遷移にもとづくレーザ誘起蛍光(LIF)を用いそ検出することに成功した。 (3)二酸化硫黄(SO_2)の紫外光解離(193nm)により生成するSO(X^3Σ^-)へのレーザ励起により,SO(B^3Σ^-)の単一振動準位0【less than or equal】v'【less than or equal】3への選択的励起(B^3Σ^--X^3Σ^-遷移)に成功した。 (4)O_2に関してはCF_4との衝突による振動緩和速度定数を,SOに関してはArまたはN_2との衝突による全素過程速度解析を行い,それぞれPhys.Chem.Chem.Phys.誌(Inside front coverに掲載)およびJ.Phys.Chem.誌に発表した。 (5)ハイパフォーマンス・コンピュータを導入し,エネルギー緩和速度を評価するために新規に開発したコードを用いてO_2のN_2による緩和過程のテスト計算を行った。 (6)非経験的分子軌道法を用いて,高振動励起したギ酸分子,ホルムアミド分子の単分子分解反応シミュレーションを行い,反応性の励起振動モード依存性およびCO生成経路とCO_2生成経路に関する機構詳細を明らかにした。 以上のデータおよび成果を踏まえ,来年度(第2年目)は振動緩和に加えて化学反応過程の実証と緩和・反応の分岐比測定および理論計算による再現に向けてさらに検討を進める予定である。
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