研究概要 |
光は物体に散乱されることにより運動量の移動をする。すなわち,物体は光の散乱後に散乱ベクトルと逆向きに運動量を得て,運動量が光の放射圧となる。本研究では,光の放射圧を利用し"界面のかたさ・やわらかさ"を可視化し,表面(界面)張力として数値化する装置を開発する。界面のかたさ・やわらかさとは以下をさす。すなわち,臨界点近傍の気液界面を目視すると,僅かな振動で界面が変形または波打ち,メニスカスが消失しやすい状況をしばしば観測できる。臨界点から離れるにつれ,相境界は明瞭になり界面はしっかりと存在としている。僅かな振動でも界面が変形・波立つような状況をやわらかい界面,相境界が明瞭な状態をかたい界面と表現する。本手法は非接触法であるため,外部の振動や熱の影響を顕著に受ける臨界点近傍の試料など,今まで測定ができなかった状態には有力である。 セル本体の材質には,SUSを用いた。窓に関しては,等方的材質でありかつ高温での熱膨張率が小さく高温・高圧での偏光測定でも実績のあったバイコールガラスを用いた。窓材と本体のシールにはメタルC-リングを用いた。本研究では,臨界温度近傍での実験を行うため温度の安定性が重要である。そのためにヒーターを対称的に配置し均一にセルを加熱し,またPID制御で温度変動を±0.1℃以内に抑えた。温度の計測はリニアリティーの高い熱電対を用いた。圧力計測には歪みゲージを用いた。 本研究ではレーザー照射に基づく界面の形状変化を側面より計測する。この研究に要求されることは1)高圧下において気液界面の形状を側面から観測できる光学系,2)レーザーのビーム形状がきれいなTEM_<00>モード,2)レーザー出力が0-6W程度まで連続可変。これらを組み合わせ,臨界点に近い熱力学状態から遠い熱力学状態まで観測できる仕様にした。
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