研究課題
我々は現在までに、水素原子核の量子揺らぎや陽電子系にも適用可能な全く新しい第一原理多成分系分子理論を開発し、様々な応用計算を実行してきた。多成分系を同時に取扱う際、平均場近似を超えるためには電子-核相関、核-核相関といった新たな多体効果を考慮する必要がある。これらの多体効果を取り込むために、我々は現在までに配置間相互作用法や摂動法を適用してきたが、精密解への収束性や、計算コストといった課題が浮上してきた。そこで本研究課題においては、これらの多体効果を効率的に取り込むため、1、多成分系密度汎関数理論、および2、多成分系量子モンテカルロ法の開発を試みた。1.多成分系密度汎関数法の開発:電子核相関を評価可能な、定量的新規相関汎関数を開発した。具体的には、現在広く用いられているLYPやOP電子相関汎関数の基となっているColle-Salvetti型相関関数を応用した。本研究では、Colle-Salvetti型相関波動関数および相関関数が満たすべき条件であるCusp条件を、電子-核相関へと拡張した。その汎関数を用いて種々の水素原子を含む系に対して計算したところ、3.3kcal/molの誤差で精度よく電子-核相関エネルギーを算出した。また、本研究で開発した汎関数は、式中に含まれる相関領域を決定する唯一のパラメータであるβの取り扱いを改良することで、更なる精度向上が望める拡張性に優れた相関汎関数であると期待される。再現することが解った。2.多成分系量子モンテカルロ法の開発:昨年度作成した多成分量子モンテカルロ法を用いて、陽電子複合体のモデル分子である[HCN:e^+]複合体の計算を実行した。2006年現在の最良変分値は、CISD計算による-92.901915hartreeであったのに対して、本手法のVMC計算では-93.2591(5)hartree,DMC計算では-93.39830(8)hartreeを得て、同複合体の全エネルギーおよび陽電子親和力をこれまでで最も精密に予測するに至った。また同様のモデル分子であるLiH-e+複合体に対しても、理論的な厳密解と比較して約0.2kcal/molの誤差で陽電子親和力を算出でき、この誤差が量子モンテカルロ法における既知の問題として知られる節固定近似に起因する事を明らかにした。
すべて 2008 2007 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (17件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Physica E 40
ページ: 301-305
J. Phys. Condensed Matter 19
ページ: 365235(1-7)
J. Chem. Phys. 126
ページ: 104305(1-7)
J. Phys. Chem. A 111
ページ: 261-267
Molecular Simulation 33
ページ: 185-188
ページ: 171-184
Quantum Chemistry Research, Ed. Erik O. Hoffman), NOVA Science Publishers
ページ: 123-162
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/%7etachi/html/Research/Publication/publication.html
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/%7etachi/html/f_Research.htm