研究概要 |
本研究の目的は,選択性と活性の両面で既存触媒よりも優れた不斉触媒を開発することであり,この目的を達成するために当研究室で開発されたP-キラルホスフィン配位子の改良とロジウム錯体触媒不斉水素化の立体選択性発現機構を明らかにするための実験と量子化学計算を行った。近年,当研究室で開発された空気中で取り扱いが容易なホスフィン配位子(t-Bu-Quinox*とAlkyny1P*)の誘導体の合成を行った。新たに合成した配位子は,代表的な遷移金属錯体触媒の不斉反応においてほぼ100%の極めて高いエナンチオ選択性を発現した。さらにこれらの配位子を様々な不斉触媒反応に用いて,それらの適用範囲を明らかにした。これらの配位子は(-)-スパルテインを用いて合成されるが,一方の鏡像異性体しか合成できない難点があったが,同じ反応中間体より逆に絶対配置の配位子の合成が可能な手法を開発した。 ロジウム錯体触媒不斉水素化の立体選択性発現機構を三象限が遮蔽されたP-キラルホスフィンロジウム錯体を用いて研究した。核磁気共鳴よって新しい活性種の捕捉とその反応性を調べることによって,エナンチオ面の選択は触媒-基質-水素の三成分が会合する段階で決定されることを明らかにした。さらに,量子化学計算によって実験事実と新たな機構の検証を行った。 触媒の立体構造と生成物の絶対配置の相関関係について,BINAPとQuinoxP*を用いて行われた実験結果をもとに解析した。その結果,BINAPを用いた場合にはリン原子上に二つのフェニル基の立体効果が反応によっては逆転することを明らかにした。
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