研究課題
炭素-炭素二重結合や三重結合などのπ電子をもつ不飽和化合物に対して、求核剤および求電子剤を付加させる三成分型反応は、多成分反応の最も基本的な様式の一つである。しかしながら、炭素カチオンを求電子剤として反応を開始させ、求核剤で反応を終結させている反応例は極めて少ない。本研究では、申請者らが最近開発した「カチオンプール法」を用いて発生・蓄積したN-アシルイミニウムイオンやアルコキシカルベニウムイオンなどの反応性に富む炭素カチオンを、求電子剤として炭素-炭素多重結合と反応させることにより新たな炭素カチオンのプールを作り、これに各種求核剤を作用させる反応の開発を目的として研究を行った。本年度は、N-アシルイミニウムイオンと分子内にヒドロキシル基あるいはカルボキシル基をもつアルケンの反応を中心に検討を行った。本研究では、すでに我々が報告しているアルケンとメトキシカルボニル基をもつN-アシルイミニウムイオンの[4+2]付加環化反応を抑制するため、新たにエトキシカルボニル基をもつN-アシルイミニウムイオンを設計し、反応に用いた。その結果、アルケン部位にN-アシルイミニウムイオンが付加し、生成するカチオンにヒドロキシル基あるいはカルボキシル基が攻撃することを見出した。分子内にヒドロキシル基をもつアルケンからはテトラヒドロフラン環が、カルボキシル基をもつアルケンからはγ-ラクトンが効率よく生成した。また、アルケンの置換様式により、endo/exo選択性を完全に制御してこれらの5員環生成物が形成できることがわかった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
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