研究課題
1.分子内反応への展開炭素カチオンを鍵中間体とする分子内環化反応は多様な炭素骨格を形成する手段としてさまざまな合成反応に用いられている。本年度および繰越年度は、分子内に炭素-炭素多重結合と水酸基をもつ化合物への炭素カチオンプールの付加とそれに伴う連続的分子内環化反応の開発をめざして研究を行った。具体的には、カチオンプール法を用いて蓄えたN-アシルイミニウムイオンと水酸基をもつ様々なオレフィンとの反応を検討した。N-アシルイミニウムイオンと4-ペンテノールの反応を行うとexo環化が進行し、高収率でテトラヒドロフラン環化合物が生成した。これに対し、4-メチル-3-ペンテノールとN-アシルイミニウムイオンの反応ではendo環化が選択的に進行した。また、3-オクテノールとの反応は、endo環化が選択的に進行した。この際、E体からはtrans生成物が、Z体からはcis生成物がそれぞれ立体選択的に得られた。いずれの反応も、N-アシルイミニウムイオンとオレフィンが反応することにより生成した炭素カチオンに対して、アルコール酸素が分子内求核攻撃することにより進行しているものと考えられる。2.キラルな化合物合成への応用これまでに見出した、三成分反応において、反応の立体選択性は比較的良好なものが多い。これは、カチオン中心に対するカルボニル基の分子内配位がいわゆる隣接基関与と同様な効果をもたらすことで、求核剤によるトラップにおける立体が決定しているためであると思われる。そこで、キラルなエナミン誘導体を炭素-炭素多重結合ユニットに用いた三成分反応を試みた。N-アシルイミニウムイオンとキラルなエナミンを加えこれに、炭素求核剤を作用させると、単一の立体化学をもつ三成分体が生成した。これを加水分解することにより、キラルなジアミノアルコールへと導くことにも成功した。また、これをマイクロ反応システムで行うことにより、反応効率が著しく向上することがわかった。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
Angew.Chem.Int.Ed. 47
ページ: 2506-2508
J.Am.Chem.Soc. 130
ページ: 10864-10865
Chem.Lett. 37
ページ: 1008-1009
Heterocycles 76
ページ: 1103-1119
Org.Process Res.Dev. 12
ページ: 1130-1136