キラルハロニウムを創製する光学活性源として前年度にデザインし、合成したキラルイミダゾリンでは、満足できる効率が得られなかった。これは、反応系内で形成されるキラルなヨードニウム塩が安定でないことが原因であると考えた。そこで、ヘテロ原子(酸素)によるその安定化を期待して二座型でヨードニウムを捕捉するキラルな配位子およびイミド窒素にヨウ素が置換したキラル分子を設計し、環状ヨードニウムを経由する不斉反応の構築を目指した。 【キラル分子の合成】ヨードニウムを供給する分子によってヨウ素原子が交換できる官能基をもつ分子としてオキサゾリンとフェノール性水酸基を併せもつ分子を設計し、その合成に成功した。また、窒素原子で共有結合を形成させ、第一級アルコールでその安定化を図るキラル分子を入手容易なアミノ酸から合成することができた。また、キラルビスフェノールを有する鎖状イミドを合成した。 【キラル分子とヨードニウムイオン源との反応】合成したキラル分子とヨードニウムを供給する試薬(N-ヨードスクシンイミドあるいは次亜ヨウ素酸tert-ブチル)との反応により、活性なヨウ化物あるいはヨードニウムの発生を分光学的に確認できた。 【不斉合成の検討】キラルヨード化合物に化学量論量のアミド部位をもつオレフィンを作用させ、分子内環化に基づく不斉合成を検討し、光学活性化合物の合成を図ったところ、ある程度の不斉誘起が認められた。
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