研究概要 |
この研究では、チューブ状ホスト分子独特の包接挙動を構造有機化学の立場から精密に解析するためにπ電子系チューブ分子を創製する。今年度は、チューブ状分子の構成単位として有機分子を包接できる新規マクロサイクル類の開発を行い、これらの興味ある包接現象を発見した。また、これらの構成単位を共有結合で段階的に連結する方法を検討した。 1.ゲスト取り込みの駆動力の一つとして電荷移動相互作用を利用する目的で、電子受容性を有するピロメリット酸ジイミド骨格を有する新規マクロサイクル類を合成した。ジイミド骨格を2個含みナフタレン環をスペーサーとするマクロサイクルは、アニリン分子がその空洞に包接されるとともに、空洞外でアニリン三量体が形成していることを明らかにした(CrystEngComm.,first published on the web 8 ^<th> February,2008)。アニリン三量体構造が実験的に見出されたのは始めてである。また、このマクロサイクルは、空孔内に電子供与性のポリメトキシベンゼン類を1:1で包接し、その結合定数はメトキシ基の数と置換位置に依存することも見出した(論文作成中)。 2.ピロメリット酸ジイミド骨格を2個含みベンゼン環をスペーサーとするマクロサイクルに、フェニルアセチレン基を4個導入したπ拡張型マクロサイクルが興味ある発光特性を示すこと、また、フェニルアセチレン基を導入したピロメリット酸ジイミド誘導体が結晶中で積層し易い性質を持ち、有機材料として有望であることを明らかにした(J. Org. Chem. 2008, in press)。 2.チューブ状分子の構築法の一つとして、まずキャップ分子を合成してからマクロサイクルと連結する方法に従い、キャップ分子の合成に成功した。現在、このキャップ分子にマクロサイクルの合成前駆体を連結した後で環化して新たなマクロサイクルを構築する方法を検討している。
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