研究課題
我々は、独自に見出した光配位子交換反応を利用し、2-10核のRe(I)ジイミン錯体が二座リン配位子で架橋されたリング状レニウム多核錯体の合成に成功している。リングを構成する各Re(I)錯体は、その最低励起状態がReのd軌道からジイミン配位子のp^*軌道へのMLCT励起状態であるため、ジイミン配位子が異なる錯体を導入できれば、リング状多核錯体内で光励起エネルギーを集約する新しい光エネルギー捕集系を構築できる可能性がある。本年行った研究によって、異種ジイミン配位子を有するリング状Re(I)多核錯体の合成経路を設計し、その単離に初めて成功した。すなわち、光配位子交換反応によって、4,4'-ジメトキシ-2,2'-ビピリジン(MeObpy)配位子を有する直鎖状4核錯体の両末端にアセトニトリル配位子を導入した。また同様の反応を、2,2'-ビピリジン(bpy)配位子を有する単核錯体に適応した後、過剰なdppaと反応させることにより、dppa配位子が単座で2つ配位した単核錯体を得た。これら2種の錯体を反応させることで、bpy配位子とMeObpy配位子を合わせ持つリング状5核錯体を8.9%の収率で得ることに成功した。また、同様の方法を用いることで3及び4核錯体の合成にも成功した。すべてMeObpyもしくはbpyで構成されたリング状錯体と、今回合成した異種ジイミン配位子を有するリング状錯体の発光スペクトル及び発光寿命を比較検討した。その結果、特に3核錯体において、Re(MeObpy)ユニットからRe(bpy)ユニットへの効率の良い光エネルギー集約が起こっていることがわかった。
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J. Am. Chem. Soc. 130
ページ: 14659-14674
http://www.chemistry.titech.ac.jp/~ishitani/frame.html