研究概要 |
(1)直鎖型四座ホスフィン配位子及びその類似体の合成:4個以上の金属中心が金属-金属相互作用を介して協同効果を発現するのに適した新規直鎖型四座ホスフィン配位子bis{(diphenylphosphino-methyl)(phenylphosphino)metane(dpmppm)の合成を行い、meso型の立体構造有するdpmppmを純粋な形で単離することに成功した。同定は^1H,^<31>P NMR,ESI-MSにより行った。(2)直鎖型四座ホスフィンを用いた直鎖状金属クラスターの精密合成:直鎖状四座配位子dpmppmとPt(I)あるいはPd(I)二核錯体との反応から[M_2(dpmppm)_2]^<2+>の組成を持つ二核錯体(M=Pt(1a),Pd(1b))を合成し、その構造をX線結晶構造解析により明らかにした。M-M2核ユニットは2個のdpmppmの6つのリン原子により強固に支持されており、さらに2個の非配位リン原子が分子内に存在する。この非配位リン原子を利用して異種金属四核クラスターの合成を試みた結果、Pt_2Au_2,Pd_2Au_2,Pd_2Ag_2,Pd_2Cu_2の金属中心を有する種々の四核クラスターが得られ、NMR,IR,UV-Vis,ESI-MS,X線結晶構造解析等の分析手法によりその構造を明らかにした。(3)直鎖状白金四核クラスターを単位モジュールとした量子ユニット(分子ワイヤー)の創製:研究代表者は既に三座ホスフィンdpmpを用いることにより,中央の金属-金属(M-M)間にヒドリドが架橋した直鎖状金属六核クラスター[Pt_4M_2(μ-H)(μ-dpmp)_4(RNC)_2]^<3+>(M=Pt,Pd)を合成し,さらに脱ヒドリド反応により2電子酸化体[Pt_4M_2(μ-dpmp)_4(XylNC)_2]^<4+>が安定に生成することを明らかにしている。本研究においても,種々の白金錯体とdpmppmとの反応を還元雰囲気下で行い、直鎖状白金クラスターの合成を試みた。(4)11族M(l)イオンを用いた直鎖状四核クラスターモジュールの創製:11族M(I)イオン(M=Au,Ag,Cu)とdpmppmとの反応により、種々の直鎖状四核モジュール([M_4(dpmppm)_2]^<4+>(M=Au,Ag),[Cu_4X_3(dpmppm)_2]^+,[M_4X_4(dpmppm)](M=Au,Cu))の合成に成功しその詳細な構造を明らかにした。これらクラスターでは金属-金属間相互作用は弱くその骨格は柔軟で多様性に富んでいることが明かとなった。(5)その他:上記以外にも、触媒反応の開発を念頭に、N,O,P異種原子を含む架橋配位子を用いることにより、Cu,Ru,Rh,Ir等の多核金属錯体の開発を行った。
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