らせん構造の外場応答型動的反転システムは、キラル情報の制御ができるため非常に興味深い。本研究では、光学活性4座配位子を含む置換活性な遷移金属錯体のらせん構造が、硝酸アニオンや溶媒などの外部刺激により瞬時に反転する現象を基盤として、キラリティーを自在に操る精密分子プログラミング(キラルテクノロジーの開発)と、新しい機能性分子スイッチングシステムの開発を目指し、幅広く探求を行うことを目的とする。本年度は、硝酸アニオン応答性を利用したアニオン選択性電極の開発や、溶媒やプロトン濃度など他の外部刺激に応答するらせん型錯体の開発について重点的に検討を行った。 (1)硝酸アニオン選択性電極の開発 直線型キラル4座配位子を用いた8面体構造の遷移金属錯体では、2つの外部基質取り込み部位を有し、そこでは様々な配位性基質の認識が可能と考えられる。溶液中では硝酸アニオンによりらせん構造が反転したが、今回、電極膜ヘキラルな亜鉛(II)錯体を導入し、硝酸アニオンに対してきわめて選択性の高い電極の開発に成功をおさめた。 (2)新しい外部刺激応答型らせん錯体の開発 極性官能基と疎水性官能基を併せ持つキラルな配位子を含むコバルト(II)を新たに合成し、錯体らせんの方向が用いる溶媒により制御可能であることを見出し、その詳細について検討を行った。また、配位子内部にさらに配位可能部位を導入することで、プロトン濃度に応じて伸縮するらせん型錯体の開発にも成功をおさめた。
|