研究課題/領域番号 |
18350033
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
木下 勇 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80128735)
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研究分担者 |
西岡 孝訓 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10275240)
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キーワード | 銅 / トリスピリジルチオメタン / カリックスピリジン / ロジウム / ヤーンテラー効果 |
研究概要 |
トリスピリジルチオメタン(tptmH)あるいはチアカリックス[3]ピリジンは基本的にピリジンと硫黄のみを構成単位とした配位子であり、本研究でその金属錯体の性質を始めて明らかにしている。前者は1つの炭素に3つのピリジンチオールが後者は1、6位に硫黄置換したピリジンによって大環状配位子を形成している。これらの配位子は基本的にピリジンの窒素を配位原子としているが、この配位子の配位した錯体は従来のピリジン錯体の性質から大きく逸脱している。tptmは比較的低原子価状態を安定化し、たとえば空気中でも安定なCu(I)錯体を合成することが可能である。本研究ではロジウムの+2酸化状態が安定に存在することを見出した。この酸化還元電位はRh(III/II)に対して0.02V(vs SCE)とかなり低い。この錯体のX線構造解析を行い、1軸に伸張した変形を起こしていることを見出した。この錯体は本来3回対称性を持つために、このような変形は純正ヤーンテラー効果によるものと理解できる。ESRを測定することによって、このような伸張変形を確認している。詳細にこの効果を調べることで、ヤーンテラー転移の詳細についても更に検討していく。一方、tptmHは中心炭素の脱プロトンを生じ、カルバニオンとして金属に配位する。生成したCu(II)tptmX(X=ハロゲン、擬ハロゲン、H_2O、OH^-)はカルバニオンが配位したCu(II)としてはじめてのものである。このことはCu(II)が種々の有機反応、C-C生成反応の触媒となることに関連して重要である。この錯体は配位しているX、ハロゲンの種類によらずFc+/FC(Fc:フェロセン)の酸化還元電位にほぼ等しい。そこでこのことを更に検討するためにCu(III)酸化状態を持つ錯体の合成単離に着手した。電極酸化、塩化セリウムアンモニウムあるいは興味あることにCu(II)Cl_2によっても酸化可能である。得られた錯体[Cu(III)tptmCl]PF_6は二価の錯体と極めて似た構造をしている。このような3方両錘構造はCu(III)としてははじめての例である。この錯体は系全体のキー化合物でもあり、今後のtptm錯体の反応にとってきわめて重要な意味を持っている。
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