研究課題/領域番号 |
18350033
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
木下 勇 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80128735)
|
研究分担者 |
西岡 孝訓 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10275240)
田中 里佳 大阪市立大学, 事務局, 技術職員 (80433316)
|
キーワード | 金属錯体化学 / 有機金属化学 / 銅錯体 / ニッケル錯体 / トリポッド配位子 / 亜鉛錯体 / 人工光合成 |
研究概要 |
銅(II)イオンとsp^3炭素原子間に結合を持つ錯体を用いて、プロトン共役電子移動反応における強い水素結合の役割を調べた。この四座tptm配位子を持つ錯体[CuF(tptm)]は、結晶中で超分子錯体層を形成しており、その層間にハイドロキノンを取り込んでいる。このハイドロキノンを包接した結晶は、[CuF(tptm)]とキノンを原料として得られたもので、これは、結晶生成過程において,キノンからハイドロキノンへの光化学変換が起こっていることを意味している。この光化学反応によるハイドロキノンの生成過程には、プロトン共役電子移動反応が含まれていると考えられる。また、反応混合物の核磁気共鳴分光測定により、反応系中でCu(III)錯体が生成していることを明らかにした。これらの結果は、[CuF(tptm)]、水分子、キノン分子が反応系中で集積していることを強く示唆している。このような集積には[CuF(tptm)]と水分子の間に強い水素結合が必要である。この特徴的な強い水素結合の生成は、Cu(II)-C(sp^3)結合をもつ銅錯体が示す特有の性質である。キノンからハイドロキノンへの光変換反応が、水分子から酸素分子が生成する過程を含んでいることから、この錯体を光合成における水分解のモデルになると考えられる。 また、亜鉛(II)のtptm錯体は、サイクリックボルタングラムで0.2V(vsFc^<+/0>に非可逆な酸化波をを示す。この酸化電位は銅錯体とほぼ同じであるが銅錯体では可逆波として観測される。酸化電位がほぼ同じであることから最初に配位子の酸化が起こり、その後、銅錯体では電荷の再構成により銅イオンが酸化されると考えられる。しかし亜鉛錯体の場合には亜鉛イオンが酸化されず、配位子の分解反応が進行することを実験的および分子軌道計算により明らかにした。
|