1.大環状チオピリジン、thiacalix[3]pyridine(py3s3)錯体を用いたオレフィンのアジリジン化反応に対する知見をほぼ完成させた。類似の非環化ピリジンと比較し、このタイプの触媒として最大の性能を持つことを明らかにした。またこの錯体[Cu(py3s3)]_2(PF_6)_2とβ-カロテンとの反応を検討し、現在カチオンラジカルとの類似性を検討中である。 2.第1遷移金属イオンと容易にM-C結合を形成するトリスピリジルチオメタン(tptmH)配位子前駆体は脱プロトンして、2価及び3価双方の酸化状態を安定化する。この中でもCu(III)は最も数少ないもののひとつであるが、この状態の限界と一般化、応用を狙い、tptmの一つの配位サイトをピリジルメチル系に変更した。この結果Cu(III)が自動的に合成可能であること、配位子前駆体の2か所のC-Hが活性化されること、強い薬理活性をもつチアゾロ環が一挙に合成可能であることを見出した。また配位子中のメチル部位がケトンに酸化されるとケタールに比べて、Cu(II)が0.4V程度安定化することを見出した。中心金属をニッケルにすると2核錯体の[Ni^<II>(tptm)X]_2X=Br Clが安定になるが、同じ形で、Ni^<III>も安定化すること、Ni^<III>では配位子の再配列が生じて、3NC配位から2NSC配位になることを見出した。Fe^<II>錯体では1つのC-S結合が解離した、カルベンとそのカルベンにもう一度Sの付加したカルバニオンの間の平衡・動的挙動の存在することを見出した。この平衡・反応は配位性のアセトニトリルの配位平衡、5配位から6配位への変化と連動している。
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