ナノドットを自由に配置するための基礎化学を開発意出来るなら、単一電子トランジスタや量子コンピューター等に応用できると期待される。しかし、通常の自己組織化に基づくナノドットの配列では、周期的な配列しか実現できない。本計画は、DNAに部位特異的に結合するジンクフィンガーモチーフ(以下ZF)に着目し、ナノドットと1:1複合体を形成させ、これをDNAの特定塩基上に結合させる事で、自由配列を行うことを計画した。平成18年度は、ナノドット性を持たないが安定性に勝ると予想されるAu_<11>(PPh_3)_8Cl_3(Au11)を選択し、ZFには5'-TGGTGG-3'を認識する2ドメインのZFを選択した。Au11-ZF複合化について次の2通りの手法を検討した。1)3-メルカプトプロピオン酸(MPA)で置換したAu11をZFに固相合成法で複合化。2)ナノ粒子結合サイトを持つ新規ZFにAu11を複合化。1)は通常金ドットとペプチドを結合させる方法であるが、実験の結果極めて収率が低い。2)による複合化法では、ZFとAu_<11>のリンカーとして生体中の重金属イオン補足蛋白質であるメタロチオネインをZFのC端側に導入した。分光学的手法と質量分析による詳細な検討の結果、この方法が有効であることを予備的にではあるが明らかにすることに成功した(成果は第57錯体討論会他に報告)。その後、改めてメタロチオネインとAu_<11>の結合について、精密な検討を加え、やはり1:1複合体を形成すること、および、金とP、Sの量論比等を明らかにした(2007日本化学会春季年会)。現在DNAへの結合性の高いZFモチーフの探索や、DNA格子への結合性の検討をおこなっている。
|