研究概要 |
(1)酸素活性化に関連する金属オキソ中間体の研究と高選択的基質酸素化システムの構築 メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)の酸素活性化機構の解明を目指して、1)新規二核化配位子とその二核鉄(II)錯体の合成、2)二核鉄(II)錯体による酸素分子の活性化と効率的なエポキシ化反応、3)二核鉄(II)錯体にH_2O_2またはm-クロロ過安息香酸との反応による二核鉄(IV)(IV)オキソおよび二核鉄(III)(IV)オキソ錯体の生成、4)メタン資化細菌の発酵法による増殖とsMMOの単離の4つを実現した。 (2)DNAの加水分解を触媒する多核金属錯体の合成と人工制限酵素の開発 DNAを位置特異的に加水分解する制限酵素モデルとしての金属錯体の構築を目指して、新規配位子の合成を検討した。新規配位子として、1,2-dipyridylethaneの両側のピリジル基にアミノ酸およびペプチド基を導入した。さらに、1,2-bis(bipyridyl)ethaneを合成し、その両端にアミノ酸やペプチドを導入するために、ホルミル基を両側に置換した1,2-bis(bipyridyl)ethaneを合成した。 (3)ヘモシアニンモデルを用いた可逆的O_2結合の機構解明と酸素検出運搬システムの構築 ヘモシアニン(Hc)による酸素分子の可逆的結合機構を解明するためには、酸素親和性(P_<1/2>)および酸素錯体の生成速度の測定が必要である。Hcそのものを用いて測定を行う事は困難であるので、その機能を再現するヘモシアニン機能モデルが必要である。我々が開発した高機能性金属錯体は、oxyHcとほぼ同様の結合様式で酸素分子を結合し、室温付近で酸素分子を可逆的に吸脱着する。そこで、この高機能性ヘモシアニンモデルを用いて酸素親和性および酸素錯体生成速度を測定した。しかし、ヘモシアニンモデル化合物は、そのままでは酸素親和性が高過ぎてP_<1/2>の値を決定できなかった。今回、アセトニトリルを加えて測定可能な領域まで酸素親和性を低下させる事に成功した。酸素錯体生成速度はレーザーフラッシュホトリシス法によって測定し、酸素錯体の生成過程に中間体が存在する事を見いだした。
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