研究課題/領域番号 |
18350035
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小寺 政人 同志社大学, 理工学部, 教授 (00183806)
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研究分担者 |
船引 卓三 同志社大学, 理工学部, 研究員 (70026061)
水谷 義 同志社大学, 理工学部, 教授 (40229696)
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キーワード | APモデル / 二核亜鉛錯体 / リン酸ジエステルの取り込み / リン酸ジエステルの加水分解 / 反応活性種 / ビスインターカレーター配位子 / DNAの分子認識 / 二核銅(II)錯体 |
研究概要 |
本研究では、APモデルとして二核亜鉛錯体[Zn_2(HL1)]^<2+>を用い、リン酸ジエステルの取り込みおよび加水分解反応を行なった。また、[Zn_2(HL1)]^<2+>によるリン酸モノエステルの取り込みも検討した。リン酸ジエステルHPNPとBDNPについて、[Zn_2(HL1)]^<2+>を触媒とした加水分解反応を速度論的に検討した。その結果、HPNPとBDNPそれぞれについて、pHを上げると反応速度が増加した。この事から、反応活性種はジアルコキソヒドロキソ種であることが示唆された。基質および錯体濃度を変化させて初速度を測定すると、いずれの基質でもMichaelis-Menten型の反応が進行しており、[Zn_2(HL1)]^<2+>が基質を取り込んだ複合体が形成している事がわかった。HPNPの反応では高いpHでも[Zn_2(HL1)]^<2+>は安定であり、二核亜鉛がHPNPのリン酸部分で架橋されてZn(OH)_2が沈殿しにくくなっている。[Zn_2(HL1)]^<2+>によるリン酸ジエステルの取り込みについては吸収スペクトル滴定から検討を行った。その結果、[Zn_2(HL1)]^<2+>はリン酸ジエステルを1:1で取り込み、ジメチルリン酸の結合定数は410M^<-1>であった。芳香族性のリン酸エステルは比較的大きな結合定数を示した。これは芳香族基と錯体内のビピリジン部位との疎水性相互作用かもしれない。次に、[Zn_2(HL1)]^<2+>によるリン酸モノエステルの取り込みについて検討した。その結果、APが高い活性を示すpH8-9の水溶液中において、[Zn_2(HL1)]^<2+>によるリン酸モノエステルの取り込みがCSI MSによって観測された。さらに、本研究では、2つの金属イオンを取込む事の出来る新たなビスインターカレーター配位子H_2L2を開発し、その金属錯体によるDNAの分子認識を試みた。H_2L2にはDNAインターカレーター部位として、単純な平面性芳香族phenanthreneを2箇所持たせた。まず初めに、H_2L2を用いて二核銅(II)錯体を合成し、X線結晶構造解析によりその構造を決定した。次に、H_2L2および二核銅錯体[Cu_2(AcO)_2(L2)]について、それぞれcalf thymus DNAとの相互作用について検討した。H_2L2と二核銅(II)錯体共に、DNAを加えていくと、それに伴って淡色効果がみられ、それぞれがDNAと結合していることがわかった。この淡色効果をMcGhee-Von Hippelの式に当てはめることで、配位子H_2L2およびその二核銅(II)錯体それぞれの結合定数がK=3.7×10^5および1.1×10^7M^<-1>と求まり、二核銅(II)錯体の形成によってDNA結合力がおよそ30倍大きくなることが明らかになった。
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