研究概要 |
本研究は,「脱塩基部位(AP site)を結合部位として有する低分子結合性核酸(アプタマー)の開発」を目的とする。具体的には,クレアチニンや尿酸などの生体代謝物質,テオフィリンやカフェインなどの薬理活性物質等を標的基質とするもので,これらの標的化合物を脱塩基部位に対面するレセプター塩基が水素結合形成により選択的に捕捉する。これまでに,チミン塩基をレセプターとするAP site含有DNA二重鎖がリボフラビンに対する優れたアプタマーとして機能することを見出している[Angew.Chein.Int.Ed.,2006,45,1563-1568]。平成18年度は,リボフラビンを蛍光マーカーとして利用する競合アッセイ系を構築することで,テオフィリン(気管支喘息の治療薬)を標的基質とするアプタマーを開発することに成功した。 リボフラビン存在下,15-mer AP site含有DNA二重鎖(5'-CGC TGC CYC CAC CAT-3'/5'-ATG GTG GXG GCA GCG-3',X=AP site, Y=receptor nucleobase)と種々の基質(テオフィリン,テオブロミン,カフェイン,クレアチニン,グルコース,尿酸)との相互作用を蛍光法により評価したところ,レセプター塩基がシトシンの場合,テオフィリンに対するほぼ特異的な蛍光シグナル変化を得られることが分かった。蛍光スペクトル変化からテオフィリンに対する結合定数を算出した結果,2.7×10^4M^<-1>となり,実試料測定に対応しうる結合親和力を有していることが分かった。事実,本系を馬血清中のテオフィリン検出に適用したところ,25μM〜75μMのテオフィリン検出が可能であった。また,検出の際には,除タンパク等の精製等を全く必要としないことから,迅速かつ簡便なテオフィリン検出法として,本手法は十分な実用性を備えていると言える。 上記の他,AP site含有DNA二重鎖/低分子化合物相互作用の熱力学的解析等を行い,これらの成果の一部を3編の学術論文として公表した。
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