研究概要 |
本研究では,液体表面特に生体膜などのソフト界面のダイナミクス測定手法を開発することを目的とした。そのため大きく分けて二つのアプローチを実施した。 一つは表面・界面張力(界面での分子挙動の物理的指標)を測定する準弾性レーザー散乱法(Quasi-elastic laser scattering, QELS)の活用である。まず新たな液体表面である室温イオン液体についてそのモル分率の変化による表面構造の変化を時間分解計測をすることにより一つの考察を与えた。次に黒膜とよばれる脂質二分子膜の張力測定をQELSにより実現することに成功した。テフロン板に2mm径の穴を開け,そこに脂質二分子膜である黒膜を形成し,新規な光学系で構成されたQELSにより膜張力を測定することができた。さらに,SDSといった界面活性剤を添加することにより,膜構造の変化を追跡するといった応用を試みている。 もう一つはブリュースター角顕微鏡(Brewster angle microscope, BAM)の高空間分解能化である。従来のBAMは十μm程度の空間分解能であったが高NAの対物レンズによりμm程度の空間分解能を達成することに成功した。全反射蛍光顕微鏡との組み合わせにより脂質分子膜の相構造変化解析への応用を試みている。
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