研究概要 |
糖鎖は生体内の細胞間の接着,分化や炎症,癌化に深く関わっており,水中において糖鎖を簡易,迅速かつ選択的に識別できる人工センサーの開発は重要な課題である。本研究では,水中において高度な糖鎖識別機能を有する分子鋳型センサーの開発を目的とした。昨年度に引き続き,優れたグルコース認識機能を示したフェニルボロン酸型比色・蛍光プローブのカチオン性ポリマーやシクロデキストリン(CyD)ゲルへの導入について研究を進めた。その結果,アゾ型比色プローブにおいては,そのスペーサー構造のグルコース認識機能に及ぼす効果の検討から,最適なアゾプローブ構造を明らかにした。またアントラセン型蛍光プローブにおいても,最適スペーサー構造があり,カチオン性ポリマーやCyDゲル内との複合化でも優れた糖認識機能が得られることを示した。アゾ型プローブに両親媒性骨格を導入した自己会合型の新規プローブも同時に開発し,グルコース認識において,新たな会合体形成に基づく新規なスペクトル応答が得られることを示した。また,ボロン酸型アゾプローブを世代の異なるポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM_n;n=32,64,128)界面に自己集積させることで、界面の鋳型で糖鎖認識を行うような新規な分子鋳型センサーの開発を行った。その結果、デンドリマー世代の違いで糖認識に伴う応答挙動に大きな違いが現れることが明らかとなった。特にジスルホン酸型のアゾプローブでは、PAMAM_<64>界面での多点認識に基づく特異的なラクトース応答,PAMAM_<128>界面ではガラクトースに特異的な応答が得られることを見出した。これはデンドリマー界面でのプローブの自己集積に基づく新規な界面鋳型センサーとして機能することを明らかにしたものである。
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