研究概要 |
アルケン等に代表される不飽和炭化水素のオリゴメリゼーションは、安価な有機資源から高付加価値化合物を高い原子効率で得るための重要な分子変換手法の一つである。我々は、早くから低原子価ルテニウム錯体の触媒機能について詳細な検討を行っており、平成19年度は、まず、ルテニウムを含む環状化合物であるルテナサイクル中間体の生成を鍵とするスチレン類の特異なhead-to-head二量化反応、スチレン類とエチレンとの鎖状共二量化反応、およびN-ビニルアミド類とアルケンとの共二量化、共三量化反応を開発に成功した。続いて、高い酸化活性を示すオキソ架橋ルテニウム4核錯体に代表される新規機能性ルテニウム錯体の合成に成功した。さらに、通常は触媒毒として作用する硫黄化合物を用いる新規ルテニウム触媒反応として、ジスルフィド類の末端アルキンへの1,1-付加反応の最初の例を見出し、ケテンジチオアセタールの新合成法を開発した。 研究期間を1年延長した平成20年度は、O価ルテニウム錯体触媒Ru(η^6-cot)(η^2-dmfm)_2[cot=1,3,5-cyclooctatriene,dmfm=dimethyl fumarate]を用いるエチレンの高選択的三量化反応の開発に成功した。本触媒を用い、50mLステンレス製オートクレーブ中、エチレン4.0MPa加圧下で110℃、48時間反応を行うことにより、C6アルケンがTON=189で得られた。副生成物はC4アルケンのみであり、C8以上のアルケンは全く生成しなかった。また、通常のエチレンのオリゴメリゼーションに不可欠な助触媒であるメチルアルミノキサン(MAO)の添加も不要であった。C6アルケンの主成分は、分岐の2-エチル-1-ブテンおよび(E)-3-メチル-2-ペンテンであり、直鎖のヘキセン類がほとんど生成していなかったことから、5員環ルテナサイクル中間体を経由する反応機構が考えられる。
|