研究概要 |
高い原子効率で、副生成物を排出しない省エネルギー環境調和型新合成反応の開発には、高度な触媒機能を有する新しい遷移金属錯体の創製が不可欠である。本研究では、まず我々が初めて合成した0価ルテニウム錯体Ru (η^6-1, 3, 5-cyclooctatriene) (η^2-dimethyl fumarate)_2 (1)の配位子交換反応により、芳香族炭化水素、p-キノンおよびビキノン類、Pyboxに代表される窒素三座配位子、さらにマレイミドを有する新規0価ルテニウム錯体群の創製に成功した。一方、同じ0価ルテニウム錯体でもRu(η^4-1,5-cyclooctadiene)(η^6-1, 3, 5-cyclooctatriene)錯体(2)とマレイミドとの反応では、錯体2のcot配位子とマレイミドとの酸化的環化反応が進行し、新規2価ルテナサイクル錯体(3)が得られることを見出した。この結果は、[6+2]付加環化反応が触媒的に進行する可能性を示している。 以上のルテニウム錯体を用いる化学量論反応の検討により得られた知見を基に、本研究では、さらに、環境調和型ルテニウムおよびロジウム錯体触媒を用いる革新的環構築反応の開発に成功した。代表的な例としては、1)ルテニウム錯体触媒存在下でのイソシアナート、アルキンおよび一酸化炭素の新規[2+2+1]共付加環化反応による多置換マレイミド誘導体の高効率合成法、2)ロジウム錯体触媒存在下でのイソシアナートとアルキンとの[2+2+2]共付加環化反応による2-ピリドンおよびピリミジン-2,4-ジオン類の高選択的合成法、3)ロジウム錯体触媒存在下、シクロブテノン類の炭素-炭素結合切断を経る電子不足アルケンとの新規環化芳香族化反応、および4)ルテナサイクル中間体を経由する異種アルケンの共二量化、および共三量化反応と、C6選択的エチレンの三量化反応が挙げられる。 以上の環構築反応は、いずれも原子効率100%で進行し、副生成物を排出しない革新的機能性有機材料モノマー合成法である。
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