研究概要 |
有機フッ素化合物は、フッ素原子が醸し出す特異な性質により、医薬・農薬、並びに液晶等の機能性材料として注目を浴びている。本研究に関適するジフルオロメチレン化合物(-CF_<2->基を有する化合物)には顕著な生理活性を示すものが報告されているので、その効率的な合成法の開発が望まれている。本研究ほ、ジフルオロメチレン化合物合成に対し有効な手法として、最もシンプルな構成単位としてジフルオロカルベン(:CF_2)に着目し、これを多岐にわたるフッ素化合物合成に展開するものである。 平成20年度は、ジフルオロカルベンから誘導できる合成ブロック:シロキシジフルオロシクロプロパンの効率的合成法を開発した。ケトンから誘導したシリルエノールエーテルに対し、ジフルオロカルベン種を反応させると、環化付加反応が進行し、対応するシロキシジフルオロシクロプロパンが得られた。続いて、シロキシジフルオロシクロプロパンの開環反応を行なった。シロキシジフルオロシクロプロパンに対しフッ化物イオンを作用させると、脱フッ素化を伴いながら、開環反応が進行し、モノフルオロα,β不飽和ケトンが主生成物として得られた。 新たに、フッ素化カルベンから得られるシクロプロペン化合物の遷移金属触媒反応を開発した。エステル基を有するシシクロプロペン化合物のフランへの骨格変換反応において、かさ高いトリメチルシリル基を有する基質については非常に反応効率が悪いことが知られているが、私たちはルテニウム錯体が本反応を顕著に加速することを見出し、ケイ素置換フラン化合物の新しい合成ルートを開発できた。
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