研究概要 |
ルイス酸-アミン反応剤は,従来塩基法とかなり異なる反応性・選択性を示す.これまで,独自のTi-Claisen縮合・aldol付加・オキシムエーテルを用いるMannich付加を開発してきた.これを利用し,有用な生理活性天然物・香料・医薬などの新規ファインケミカルズの合成への短段階・実用的合成への応用を行ってきた.これらは現在,実験室では使われており,工業化も検討中である.今年度は,これまで未踏領域であった交差型不斉Ti-Claisen縮合の開発を中心に,複雑な構造を有す2つの光学活性生理活性天然物の合成を完成した. すなわち,容易に調整できる1,4-ジオキソラン-2,5-ジオンをキラルテンプレートとし,交差型不斉Ti-Claisen縮合を鍵段階として利用して(ほぼ100%交差選択性,>95%立体制御,不斉助剤も完全回収可能),生理活性天然物,(+)-Alternaric acid(9段階,通算収率16%)および(-)-Azaspirene(24段階,通算収率2.3%)の不斉全合成を達成した.昨年度に比べ,各工程のリファインを行った. さらに今年度,Ti-Claisen縮合で得られる各種β-ケトエステル類の高立体補完的エノールトシル化と立体保持クロスカップリング反応(SYNFACTS誌掲載),単純エステルの高効率α-ホルミル化,α-ヘテロ原子置換エステルの脱水型Ti-Claisen縮合など,Ti-Claisen縮合の関連反応の大幅な展開を行った.この実績を元に,一連の革新的アシル化反応の重要な展開として,また光学活性α-ヘテロ原子置換ブロックの実用的合成法として,今後もさらに大学や企業で広く利用できるレヴェルまで引き上げる.
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