研究概要 |
キノンメチド類のトポケミカル重合に適した結晶構造を構築することを目的に、キノジメタン類のトポケミカル重合に有効であったハロアルコキシカルボニル基(クロロエトキシカルボニル基、ブロモエトキシカルボニル基、フルオロエトキシカルボニル基、ヨードエトキシカルボニル基)を有する新規キノンメチド類、7-シアノ-7-(ハロエトキシカルポニル)-1,4-ベンゾキノンメチドを分子設計し、各モノマーの固相重合反応性および結晶構造とハロゲン置換基との関連について検討した。その結果、熱条件下では、全てのモノマーにおいて重合は進行したが、得られるポリマーはアモルファスであった。UV照射では、各モノマーにおいてそれぞれ異なった反応性を示し、フッ素を有するモノマーは全く反応が進行せず、塩素を有するモノマーからはごくわずかなオリゴマーが得られ、ヨウ素を有するモノマーからはヨウ素の脱離を伴う様々な生成物が得られた。一方、臭素を有するモノマーからはトポケミカル重合は進行しないものの、結晶構造を維持したまま分子量がモノマーの約2倍である化合物が高収率で得られた。この生成物の^1H,^<13>CNMR、元素分析、および単結晶X線構造解析を行った結果からキノイド骨格の二重結合間で[2+2]環化付加した2量体であることがわかった。この[2+2]環化付加反応は、溶液状態では進行しない固体状態に特有のトポロジカルな反応であることも明らかとなった。また、各モノマーの結晶構造解析から、これらモノマーの固相重合反応性を合理的に説明した。 キノジメタン化合物の固相重合における反応生成物の詳細な解析およびモノマー単結晶X線構造解析を行い、その反応機購について考察した。それぞれのモノマーの脱気下での光固相重合を行った結果、いずれのモノマーにおいても高分子量のホモポリマーと2量体である[2.2]パラシクロファンが生成することを見出した。[2.2]パラシクロファンは高反応性で溶液中で酸素と反応してモノマー2分子と酸素分子が反応したパーオキシドシクロファンへと変化することを明らかにした。モノマー単結晶のX線構造解析を行った結果、結晶中のモノマー分子はカラム状に斜めに配列してトポケミカル重合が進行するモノマー結晶と類似のスタッキング構造であったが、反応点間距離が長く、スタッキング距離もホモポリマーの繰り返し単位より長かった。固相重合では反応中間体としてまずビラジカルダイマーが生成し、長時間固相反応を続けるとビラジカル種が分子間でカップリングすることによりホモポリマーがゆっくりと生成する。一方、溶液に溶解させるとビラジカル種が分子内でカップリングして[2.2]パラシクロファンが生成する反応機構であることを明らかにした。
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