研究概要 |
ヒト血清アルブミン(HSA)を不斉反応場とする2-アントラセンカルボン酸(AC)の不斉光環化二量化反応を行うとともに、HSAへのACの結合挙動ならびに反応機構について詳細に検討した。まず、ACのHSAへの取り込み挙動をUV、円二色性(CD)スペクトルならびに蛍光スペクトル測定装置により検討した。ACのHSAへの取り込み挙動の解析 HSAを一定濃度とし、そこへACの添加滴定を行ない、それぞれの濃度におけるUV、円二色性(CD)スペクトルを測定し、HSAにはACに対する5つの異なる結合サイトが存在することを明らかとした。さらに既にHSAに対する結合部位・結合挙動・結合定数が報告されているワルファリンならびに4-ヨウ化安息香酸存在下、ACの取り込み挙動についても検討下結果、ACに対する第1ならびに第2サイトを明らかとした。また、ACの蛍光強度、最大発光波長は溶媒極性などにより大きく変化することが知られているので、ACを一定濃度としHSAを滴定添加し、蛍光スペクトル変化を測定した結果、第1〜5サイトにはそれぞれ、1,1,3,5,10分子のACが結合し、第1サイトの結合定数は3.0x10^8と非常に大きいことを明らかとした。・光反応AC濃度を一定とし、HSA濃度を変化させて光反応を検討した。光反応は、Ar雰囲気下様々な温度でHSA吸収が無くACのみが光を吸収する、500W高圧水銀灯のウラニウムフィルター透過光(>320nm)およびモノクロメーターを利用した330nm単色光を照射することにより行い、光照射後、後処理を行ない、限外ろ過膜によりHSAを除去、アキラルおよびキラルカラムを取り付けたHPLCにより生成物比、転化率ならびにエナンチオマー過剰率(ee)を決定した。いずれの系においても光二量化反応は比較的良好に進行した。eeについて着目すると、syn-Head-Tail二量体(2)では最高76%ee、anti-Head-Head二量体(3)では最高75%eeが得られHSAは光不斉反応場として有効に機能することを明らかとした。
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