研究概要 |
フラーレンポリマーはエレクトロニクス,エネルギーなどの分野で新規炭素材料の基盤分子として注目を集めている。フラーレンポリマーの合成法として,これまでフラーレンを直接重合させる方法が報告されているが,フラーレンが対象性の高い構造を有していることから,生じてくるポリマーの構造を予め設計することは極めて難しい。近年,ポリマー構造を合成する手法として,可逆的な非共有結合を利用した自己集合が注目されている。この方法は既存の有機合成では成しえないような複雑な分子配列を容易に構築できることから,超分子ポリマーの合成に利用されるようになってきた。我々は非共有結合を基盤とした自己集合が超分子フラーレンポリマーの合成に利用できると考えた。今回,カリックス[5]アレーンとフラーレンの分子間相互作用を利用して,超分子フラーレンポリマーの合成を計画した。具体的に,ダンベル型フラーレン誘導体1とフラーレン結合部位を二つもつテトラキスカリックス[5]アレーン誘導体2を設計した。1と2の連続的な包接により超分子フラーレンポリマーを合成できると考えた。 今年度は固体状態における超分子ポリマーの形態の新たな制御法と溶液中における重合構造について検討を行った。1と2の混合比を変化させることにより,固体状態で形成される超分子ポリマーの形態が制御可能であることを明らかにした。また,溶液中において可逆的結合で生成しているこの超分子ポリマーのサイズを動的光散乱により検討したところ,トルエン中で約1.2マイクロメーター程度の高い重合度をもつポリマーが生成していることがわかった。ポリマーの結合力が非共有結合であることを考えれば,驚くべき結果である。この様な結果を踏まえ最終年度となる来年度はこの超分子ポリマーの光および電気化学的特性についてさらに検討を進めたい。
|