1. 光吸収増強素子 ナノレベルの粗さを有したバルク銀薄膜の表面プラズモン散乱を活用した拡張三層構造について、その最適化を試み、偏光特性や中間層の屈折率の効果などの検討を通じて、増強機構についての詳細な検証を行った。これにより、広い波長範囲で、様々な微弱吸収層の光吸収率を10倍以上に増強することに成功した、また、この高い増強率が、表面プラズモン散乱光と入射光との干渉による電場増強と、散乱光の内部全反射による光閉じ込め効果が相乗的に機能することにより発現することを実証した。 2. 吸収増強素子を利用した光電変換 上記の光吸収増強素子において、中間透明層を導電性ITO膜に置き換えることにより、吸収増強機構を内包した湿式の光電変換素子のモデル系を作成した。これにより、増強された光吸収率が、それに比例する形で光電流を著しく増加させることを実証した。 3. 金属ナノ粒子のレーザー合成 金属ナノ粒子は、高次ナノ構造のいわゆるBuilding Blockとして、様々な応用が期待されている材料である。本研究では、ケトン中に分散させた金属酸化物粉末へのパルスレーザー照射により誘起される超非平衡反応場を利用した新規なナノ粒子合成法を確立し、銀および銅について、有機保護膜なしに、数十wt%を超える安定な金属ナノ粒子分散液の作成を可能にした。 4. 表面プラズモン誘起増強発光系の新展開 金属表面近傍における蛍光分子の発光増強は、一般的には金属表面から3〜10nmの距離で働く近距離相互作用に由来する。この作用距離を、1nm程度の超近距離まで短縮するのみならず、逆に数十nm以上の長距離まで拡大可能な新規な金属超微粒子集積膜の構築に成功した。 5. 吸収増強素子と蛍光増強素子のハイブリッド化による超増強蛍光 蛍光自身の強度を数十倍増強する上記のような素子と、前述の光吸収増強素子を組合わせると、単純な積から数百倍の蛍光増強が可能になることが予想される。これを実証するための予備的な実験として、レーザー合成した銀ナノ粒子を用いた蛍光増強層を拡張三層構造とハイブリッド化することにより、固有蛍光量子収率が小さな蛍光分子に対し、1000倍を超える増強率を実現できることを明らかにした。
|