研究概要 |
プロトン-電子連動系の理論設計による非破壊読み出し可能な量子光メモリーの創成ということで,以下のような研究実績を挙げた.まず,プロトン-電子連動系の無機分子[Co(Hbim)(C_6H_4O_2)(NH_3)_2]_2を理論設計し,その分子が多重な安定状態(^1A_g,^5A_lおよび^9A_g状態)を持つことをB3LYPレベルの密度汎関数計算により確かめた.さらにこの分子の電子状態と振動状態を詳しく調べ,低スピン^1A_g状態においては600-700nmの波長領域で強い吸収がなく,一方,中間スピン^5A_lおよび高スピン^9A_g状態ではその可視領域に強い吸収があることを見いだした.また,振動による赤外領域の吸収では^1A_g,^5A_lおよび^9A_g状態で,それぞれ,2690,2120,2770cm^<-1>で非常に強い吸収があり,中間スピン^5A_l状態が他の2つの状態に比べて際立っていることを明らかにした.,2120cm^<-1>付近の赤外光をプローブ光としてその吸収の有無を調べるることで中間スピン^5A_l状態と他の2状態を区別出来るをことを示している.これらのことは無機分子[Co(Hbim)(C_6H_4O_2)(NH_3)_2]_2が量子光メモリーの候補となりうることを強く示唆するものである. 実験的には,まずはじめに2種類の配位子のみからなる化合物[Ru^<III>(SQ)_2(Hbim)]_2の合成を行った.この分子の生成はIRスペクトルと質量スペクトルにより確認し,この化合物の結晶化を試みている.
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