一次元系は、系のシンプルさ故に厳密解が得られ易いため、古くから理論的な研究が盛んに行われ、様々な物理現象の起こることが予測されたが、実際に作り出すことは技術的には難しく長い間実現しなかった。人工的に作り出した単原子ワイヤーに、実際に低次元系固有の物理現象が起こっているかどうかを観測しようとする試みは、まだ始まったばかりである。一次元系の形成とその物性に関する知見を得て蓄積することは、ナノテクノロジーの進歩と共に急激に微細化の進む電子デバイスにおいても非常に重要である。 本研究では、固体の清浄表面に原子を並べて一次元系を創り出し、その構造・電子状態・磁性を詳細かつ精密に調べ、実際にどのような物理現象が起きているかを観測する。多くの系について観察を重ねてデータベースを構築し、その中から法則性を導き出し、一次元系に起こり得る低次元系固有の物理現象と、その発現のメカニズムを明らかにする。また、そのようにして得られた知見を基に、形成する一次元構造の諸条件をコントロールすることで、逆にその物性を制御することを目指す。
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