研究課題
生きたバクテリアの表層に目的の機能性官能基を提示する「バクテリア表層化学改変技術」を開発・改良してきたが、これまでは高度な合成を行う必要があった。そこで、昨年度にひきつづき、合成が比較的容易な化合物を使用した手法の確立をめざした。細胞壁前駆体誘導体としてN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)誘導体を用い、機能性官能基としてケトン基を導入したN-レブリノイル型の誘導体をいくつか合成して比較検討し、より効率的な化合物の表面提示の系が確立できた。適切な前駆体構造(水酸基をアセチル基で保護し1位にリン酸基を導入したもの)を持った細胞壁前駆体を用いることで、効率的なバクテリア表層修飾が可能であることがわかった。また、前駆体の取り込み経路については、リン酸基のないコントロール化合物と比較することにより、細胞壁生合成経路を通っている可能性が高いことを示すことができた。これらの結果を整理して、ワクチン開発をめざしてin vivo への応用も可能になる系として論文にまとめ、Chem.Eur.Jに投稿し、掲載された。さらに、細胞壁への取り込みの直接的な証拠を得るため、ペプチドグリカンをリゾチーム処理し、質量分析によりペプチドグリカン構成成分にとりこまれた細胞壁誘導体の検出を検討する実験を昨年度に引き続いて行った。しかし天然型のピークがかなり大きくでることにより、質量分析による検出は困難であったのでこれについては今後の研究でも検討する予定である。また、これらの研究のなかで、ペプチドグリカン構造がこれまでになく小スケールの培養で質量分析により解析可能であることが判明したので、論文投稿予定である。以上、シンプルな化合物でバクテリア表層に目的化合物を提示させることができるようになったので、バクテリア表層化学改変という本手法の応用可能性が大きく広がったと言える。
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Chem. Eur. J 14
ページ: 10192-10195
http://www.cf.ocha.ac.jp/acpro/sadamoto/