銅含有アミン酸化酵素において、7種類の基質ポケット変異型酵素を作製し、その定常状態速度論を行った。その結果、Y302V、Y302S、I137V変異型酵素などにおいてフェニルエチルアミンを基質としたときに、プロトン引き抜きにおいてプロトントンネリングの可能性を示す大きな同位体効果(4-5)があることが判明した。トンネリングを引き起こすために必要な構造情報を得るために、X線結晶解析によってI137VとY302Vの立体構造を決定した。 また、銅型酵素結晶と金属置換型結晶を嫌気条件下、過剰の基質アミンでソーキングし、セミキノンラジカルと還元型TPQの状態をそれぞれ作り出すことに成功した。それらを、液体フロン中で瞬間凍結して、X線結晶解析によって構造決定した。得られた構造より、還元型TPQと銅イオンまたは酸素分子との電子の受け渡しがTPQがコンフォメーション変化を伴うことがわかった。すなわち、TPQが銅イオンに直接配位することによって、速い電子移動が生じていると考えられた。 次年度以降のキノヘモプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)の分子内・分子間電子伝達機構の詳細な解析の準備段階として、本酵素の電子受容体cytc_<550>遺伝子を宿主菌ゲノムDNAよりPCRによって増幅し、cytc_<550>の大腸菌発現系を構築した。ヘムタンパク質発現に優れた大腸菌株JCB387において発現実験を行った結果、分子量が予想された値より1.6kDa増大していたが、著量のヘム結合タンパク質の発現がペリプラズムに認められた。また、広宿主ベクター上にHis-tagが付加されたαサブユニット遺伝子を導入し、新規にαサブユニット発現系を構築した。これによって、αサブユニットに対する変異導入を行うシステムを構築することができた。
|