研究概要 |
銅含有アミン酸化酵素の反応中間体における電子移動とプロトントンネリング反応に必要なコンフォメーション変化を解明するため、反応速度の粘度依存性を解析した。その結果、電子移動を伴う還元型TPQからセミキノンラジカルが形成される過程にのみ影響が見られるばかりでなく、この効果は活性中心に入りうる低分子増粘剤でのみ観測された。また、セミキノンラジカル状態のX線結晶構造解析を行った結果、TPQが銅イオンに配位していることがわかった。すなわち、反応中間体の電子移動には還元型TPQのコンフォメーション変化が重要であることがわかった。またN381Q変異型酵素の反応中間体のX線結晶解析によって、触媒塩基とプロトンの距離が近接していることがわかった。しかし、速度論解析の結果、トンネリング効果は減少しており、プロトン移動において、触媒塩基とプロトンの距離だけでなく、周囲との相互作用効果によるポテンシャルカーブの重なりの大きさが重要であることが判明した。 キノヘムプロテインアミン脱水素酵素においては、補酵素形成における電子移動の機構を解析するために、αサブユニットのヘム結合に関与する残基に対する変異導入を行った。その結果、多くが活性を消失したが、一部には活性を示すものが存在した。活性を示す変異型酵素は補酵素CTQとヘムを含んだが、活性のない変異型酵素は補酵素CTQもヘムもいずれも含有していなかった。これらの結果は,ヘムの存在がCTQ生成に必須であることを示唆している。加えて、 PVDF膜上においてペルオキシダーゼ活性の検出を試みたところ、活性をもつ変異型酵素のα-サブユニットにおいてペルオキシダーゼ活性が検出された。以上のことから、α-サブユニットは,TTQ生成に必須の役割を担う二ヘム・ペルオキシダーゼタンパク質と類似した機能を有し、そのヘム分子が補酵素形成の際の電子移動を仲介することがわかった。
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