研究概要 |
ZnO系紫外発光ダイオード(LED)は,市販されている窒化物系青色LEDに比べて,安価な材料費,大型単結晶基板の存在,紫外領域における高い発光効率など,産業上多くの利点を有するため,注目を集めている.本研究では,高効率ZnO系青色・紫外LEDを開発することを目的とした.現在のZnO系LEDにおける問題点を解決するための課題とそれに対する実施状況および解決すべき今後の課題について,以下に概略を述べる. (1)ZnO中の正孔濃度向上:供給ガス・成長極性面の好適な選択により,窒素ドーピング効率向上に成功,正孔活性化率の向上が今後の課題. (2)障壁層MgZnOのp型およびn型化技術の確立:MgZnOのp型およびn型化に成功.ダブルヘテロ接合によるEL動作確認,キャリア濃度の正確な評価が今後の課題. (3)単結晶基板上のLED素子形成:ZnO単結晶基板の好適なオフ角選択および洗浄方法を確立し,紫外LEDの作製に成功,発光効率の向上が今後の課題. (4)透明p型金属材料の探索:仕事関数が大きい透明導電性高分子が有用であること確認,接合界面の欠陥準位評価ならびに高温動作における素子の信頼性確認が今後の課題. 全体として,当初の計画通り研究を実施することができた.特筆すべき成果として,(a)MgZnO/ZnO界面における量子ホール効果の観測ならびにMgZnO・ZnO薄膜で室温発光寿命の延長に成功(ともに世界最高水準の結晶品質を実証),(b)単結晶基板上のLED構造でバンド端発光のみからなる紫外ELを実現,が挙げられる.しかし,最終ゴールである実用レベルのZnO系青色・紫外LEDには至っていない.このことが材料品質やプロセスによる問題なのか,ZnO系材料固有の問題なのか,今後明らかにする必要がある.
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