永久双極子を持つ分子を用いた有機半導体素子では、素子に電圧が印加されたときに配向分極を生じる可能性が考えられる。これを検証することを目的に、典型的な有機電界発光(EL)材料の単層素子の変位電流測定を行った。正孔輸送材料としてTPD層、電子輸送性材料としてAIq3層の測定を行った。室温では、それぞれ正孔注入と電子注入による充放電流のみが観測され、配向分極による電流やヒシテリシスを示す分極は観測できなかった。材料のガラス転移点近傍まで温度をあげると、分子が開店しやすくなるため、配向分極性がたかまることが期待される。そこで、昇温状態で測定を行ったところ、キャリア注入の低電圧化とキャリアとラップ効果の低減が観測されたものの、配向分極電流は観測されなかった。一方、遮光状態で蒸着膜を作成し、ケルビン法による表面電位測定を行ったところ、両物質と巨大表面電位を現象を観測した。これらの結果は、永久双極子が配列した膜構造が生じているものの、バイアス電圧による分極反転は生じていないことを示唆している。一方、有機双安定素子材料のAIDCNの単層素子においては、ヒシテリシスを示す分極が観測された。現在、分極反転が生じているかどうかを検討している。上記実験では、印加する交流電界の周波数を高くすることや温度を下げることできなかった。より詳細に電気特性を解析するため、装置改造を行い、1kHzまで測定できるようにし、また冷却器による冷却も可能となった。現在、それらの条件を変えながら再測定を行っている。
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