有機トランジスタは、大面積な基板やフレキシブル基板などの上に、印刷のような簡単な方法で作成できる可能性から注目を集めているが、p型では良い材料がたくさんあるのに対して、n型を示す材料が少なく、かつn型有機トランジスタは通常の雰囲気下では不安定な場合が多いことが問題になっている。我々は有機トランジスタの性能が有機半導体ばかりでなく電極材料にも大きく依存するに注目し、電極にカーボンペースト起源のカーボンを用い、ウェットプロセスのみよって、注入効率のよいカーボン電極を作成する方法を開発してきた。この方法はp型のみでなくn型に対しても、ボトムコンタクト型の構造で有機半導体の最大効率を引き出すことができる。本年度はこの方法を、レーザービームによるシンタリングと組み合わせることにより、ゲート長2μm程度までの微細なデバイスを作成できることを明らかとした。このようなカーボン薄膜は60nm程度と薄く、導電性透明電極となる。またバルキーなt-ブチル置換したHexamethyleneTTF(HMTTF)を合成し、単結晶で2.3cm^2/Vs、薄膜で0.98cm^2/Vsという移動度(p型)を実現した。この物質のトランジスタは低閾値電圧を示し、85日後にも安定な動作を示した。テトラチアペンタレン(TTP)系有機半導体を用いた有機トランジスタや、溶液法で0.11cm^2/Vs程度の性能を示すアルキル置換DibeozoTTF(DBTTF)を開発した。
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