研究概要 |
紫外光・可視光を交互に照射して色が変わる現象をフォトクロミズムという。我々は、光によって色だけでなく単結晶または結晶薄膜表面の形状も可逆的に変化するジアリールエテンという1つのフォトクロミック化合物を研究対象にして、以下のことを明らかにした。 I 光照射により出現する薄膜表面形状は、結晶を構成するジアリールエテン分子の結晶構造に起因している。今までの針状結晶が光で発生する誘導体のトリメチルシリル基をフェニル基に置換すると、粒々の表面が生成した。これの結果、表面形状は結晶構造に由来することを今年度論文発表した。 II 光照射した後に発生する微結晶からなる表面はフラクタルであり、光照射後の保持温度によって異なるフラクタル次元の表面が現れる。 III 保持温度を上げることにより、表面に生えていた小さな針状結晶は、次に生えてくる大きな柱状結晶にオストワルドライプニングによって取り込まれていくのが確認できた。 IV 温度を上げることで超撥水表面が発現するまでの時間が、30℃での15時間から、50℃で1時間半にまで短縮できるが、それ以上の温度だと超撥水性が発現しないことも明らかにした。 V 温度を変えて成長した結晶表面をフラクタル解析することにより、凸凹のサイズが0.01μmから50μmのスケール範囲でフラクタル次元が高いことが必要であることが判明した。これは、蓮の葉などの自然界に存在する超撥水表面が0.1μm,10μmの2つのサイズの凸凹からなっているのと対応していると考えられ、自然の妙味を再確認した。
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