本研究の最終年度において、(1)酸化物半導体のナノ多孔膜と(2)イオン伝導材料の界面に、光吸収材料ならびに光増感剤として光吸収係数の高い化合物半導体の量子ドットを用いることで、固体系光電変換素子の高効率化を検討した。量子サイズのナノ結晶には、ハロゲン化化鉛と炭素、アンモニアの化合物から成る有機無機ハイブリッド型のペロブスカイト構造の結晶を用い、このナノ結晶を、合成プレカーサを溶かした有機溶液をスピンコート塗布する方法で、(1)と(2)の界面をつかった自己組織化による結晶成長によって形成させた。結晶形成はスピンコートと同時に1分以内に完成し、サイズがおよそ2nmの結晶の析出が電顕によって確認された。ペロブスカイト結晶のバンドギャップ励起による強い可視吸収を利用することで、可視光領域の電極変換効率を高めるための成膜条件の最適化を図った。酸化物半導体に二酸化チタンを用いた系で、半導体の膜厚を3μmまで薄膜化した。臭化物ペロブスカイトでは、イオン伝導層に臭素化合物を用いて、光電変換作用スペクトルが可視光の600nmを吸収端として得られ、光電流の量子効率は80%に到達した。また、ヨウ化物ペロブスカイトでは、イオン伝導層にヨウ素化合物を用い、800nmまでの吸収端が得られたが、量子効率は低く60%に届かなかった。最終的に得られたエネルギー変換効率は、吸収は吸収波長範囲の広いヨウ化物系で3.81%となり、量子ドットを増感剤として用いる光電変換素子としてはこれまで最高の値が得られた。一方、臭化物系では、光電変換特性の中で光起電力が0.96Vまで向上した素子が得られた(効率は3.1%に留まった)。問題点として、量子ドットが化学的に不安定であり、持続的な出力の維持に欠ける点も判明した。イオン伝導材料側の置き換えによって今後改善を検討する。
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