研究概要 |
1.ポリエチレンイミン(PEI)の分子内、分子間での弱い相互作用の移動を示す目的で,PEIの光散乱実験を行った。PEI、N-メチル化PEIの試料調製法を検討した。前駆体の加水分解でPEIを得るが,これにアンモニアを用い、透析で副生成物を除去し,高純度の試料を得た。両ポリマーの良溶媒/非溶媒の組み合わせを見いだし分子量分別を行い,良溶媒で光散乱測定を行ったが、ポリマー濃度に伴い分子量が見かけ上増加し、希薄溶液でも分子間で会合を生じることが示唆された。したがって、孤立鎖の解析法は適用できず、今後も研究を継続する。 2.無水、含水(0.5、1.5、2.0水和物)PEIの結晶構造のシミュレーションを3次元周期境界条件のabinitio分子軌道法(MO)計算で行った。Hartree-Fock法、密度汎関数法の理論と6-21G基底関数を用いた。1.5水 和物では構造最適化で計算が収束した。N-H…N水素結合の精度を上げるために関係する窒素と水素の基底関数を6-311G、6-311G**に拡張しさらに検討を進めた。 3.[-(CH_2)ySe-]x(y=1,2,3)で表される3種のポリセレノエーテルのコンホメーション解析を行い、これらの分子特性を電子構造的に明らかにし、類似のポリエーテル、ポリスルフィドとコンホメーション,熱的性質を比較した。y=1のらせん構造、y=2,3の結晶構造を周期境界条件のMO計算で最適化し,バンド構造を求め,電気、光学特性を議論した。一次構造から高次構造,諸物性を予測する分子設計を実現した。 4.窒素、酸素、硫黄のうち2種のヘテロ原子をエチレン基で結ぶ構造単位をもつ3種の交互共重合体の特性解析を行い,形成される弱い相互作用と分子特性,二次構造、結晶構造の関係を明らかにした。窒素と酸素、窒素と硫黄を含む高分子は未合成であり,ここでも原子配列から高次構造を予測する分子設計を実現した。
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