研究概要 |
本研究の目的は, 熱可塑性の結晶性高分子材料を対象として, 溶融状態の高分子材料内の『構造』を制御することが, 結晶化などを駆動力とする自己組織化プロセスの制御につながるとの観点から, 両者の因果関係を系統的に明らかにすることである. 具体的には以下の研究を行った. 1. ポリエーテルエステルエラストマー繊維の溶融紡糸・構造解析検討 ハードセグメントの結晶化によりゴムに近い変形回復挙動を示すポリエーテルエステルエラストマー繊維について溶融紡糸検討を行った。その結果、紡糸過程の詳細なオンライン計測により、紡糸線上での固化時に既に弾性変形を内在していることが明らかになり、これが巻取り繊維の物性に影響を与えている可能性が示された。さらに、前年度導入した試料吹き付け冷却装置を利用した極低温下におけるX線回折測定と、バイブロンを利用した粘弾性測定により、ソフトセグメントの低温における結晶化が繊維の低温物性に大きな影響を与えていることが明らかとなった。 2. シクロオレフィンコポリマーフィルムの逐次二軸伸長検討 前々年度に導入した卓上型二軸延伸装置を用い, シクロオレフィンコポリマーフィルムの逐次2軸延伸挙動について検討を行った. その結果、結晶化を伴わない非晶性のポリマーフィルムの延伸においても、1段目の延伸が2段目の延伸に影響を与えており、1段目の延伸の効果の一部は、通常の分子の緩和時間よりはるかに長い緩和時間を有していることが明らかとなった。
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