アレルゲンとはアレルギー疾患を持つ人間の抗体と特異的に反応する抗原のことである。近年、アレルギー疾患の患者数は年々増加しており、乳幼児から成人に至るまで、アレルギー物質を含む食品に起因する健康被害が多く見られるようになった。現在、日本の総人口の約30%は何らかのアレルギー疾患を持っているといわれており、迅速で簡便なアレルゲンセンシングシステムの創製が急務である。このような事項を背景に、本研究では、薄膜干渉の仕組みに着目し、同仕組みの免疫測定分野への応用の可能性を探った。薄膜干渉は、色素や蛍光ではなく、構造に由来した光の干渉効果によって発色を示す仕組みである。そのために酵素標識体や蛍光標識体との反応作業を必要とせず、標的分子検出に至るまでの反応段階の縮小化が期待できる。タンパク質のほとんどは数十Åのサイズであり、本論で検討している薄膜干渉の膜厚と同様のスケールと判断される。したがって、光干渉性薄膜表面にタンパク質が吸着することで膜厚の増加がおこり、そのタンパク質サイズに依存した色変化が生じると予測される予想した。本年度なアレルゲン検出系のモデルシステムとして、アビジン-ビオチン結合に着目し、薄膜干渉を応用したタンパク質検出法について検討した。アビジンは、卵白中に存在する分子量約68kDaの塩基性糖タンパク質であり、サブユニット4個からなる。各サブユニットは1分子のビオチンとの非常に高い親和性(結合定数=1.0×10^<15>M^<-1>)によって結合することが知られている。そこで熱酸化法によって光干渉性のシリカ薄膜を調製し、その表面にビオチンを修飾した。ビオチン部位への選択的なアビジンの吸着を、薄膜の干渉色変化から評価・確認した。その結果、1.0×10^<-8>Mの感度で迅速かつ簡便にアビジンを検出可能であることを見出し、アレルゲン検出システムの基盤を築くことに大きな成果を得た。
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