| 研究概要 |
アビジン-テチオビオチン結合によって組織化された高分子薄膜を調製し,ビオチンの進入による膜の分解と干渉色変化について検討した。シリカ薄膜表面に修飾されたデチオビオチンの結合によって形成されたアビジンSAMが,ビオチンを認識して剥離することがHRPを利用した酵素発色反応試験から確認された。ビオチンの進入によってデチオビオチン-アビジン結合が解離したからである。アビジンSAM表面にPS粒子を固定化した試料においては,アビジン膜の分解とともにPS粒子膜が剥離することが確認され,デチオビオチン-アビジン結合の解離が大幅な干渉色変化として出力された。また,デチオビオチンが標識されたウシ血清アルブミン(BSA)とアビジンとの交互多層膜の調製にも成功した。デチオビオチン-アビジン結合のみで組織化された同膜は,ビオチンを認識するとともに分解し,大幅な干渉色変化を示した。デチオビオチン-アビジン結合とビオチン-アビジン結合との置換時間が膜の分解速度を律速しているために,膜厚に分解速度が依存しないことが明らかとなった。
以上の結果より,モデル系を用いて「アレルゲン物質→薄膜構造の変化→色変化によるアレルゲン物質の解明」の図式が成立する可能性を確認し,ナノ薄膜の構造変化を色変化として可視的に変換する新規なセンサーとしての有用性が示唆された。この図式を利用した多岐に亘る生体分子や微生物などのセンシングへの応用、展開が期待される。
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