研究概要 |
液晶ゲルは液晶エラストマーが液晶溶媒で膨潤したゲルであり,液晶とゲルのハイブリッド材料である.液晶の分子配向とゲルのマクロな形状が結合することにより,多様な刺激応答挙動が期待される.本年度は,伸張による液晶配向のスイッチング挙動および電場応答挙動のダイナミクスを実験的に調べた.垂直配向を有する液晶エラストマー薄膜を作製し,初期配向と垂直方向に伸張した.このときの応力,ポアソン比,赤外二色性をひずみの関数として調べた.ダイレクターの回転が起こるとき,応力はほぼ一定のままとなり回転軸方向のポアソン比はゼロに近くなった.ダイレクター回転が完了すると応力は再び増加し,ポアソン比も一般のエラストマーと同様の1/2になった.この挙動は伸張に対して可逆的であった.液晶ゲルの初期配向に垂直に電場を加え,屈折率変化とマクロひずみの応答時間を調べた.電場を印加した場合,電圧とともに両者の応答時間は減少したが,屈折率変化の方が形状変化よりも10倍程度早い応答を示した.加えた電場を除去した場合,初期状態を回復するのに要する時間は両者ともに電圧に依存しなかったが,屈折率変化の方が形状変化よりも10倍程度早い応答を示した.また,ゲルの架橋密度依存性についても調べ,電場応答のしきい値は架橋密度の増加とともに増加したが,応答速度への架橋密度の影響は小さかった.光学応答が力学応答よりも高速な理由についてはまだ不明であり今後の課題である。実験結果をもとに,液晶ゲルの電場応答を記述するモデルを構築中である。
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