研究概要 |
今年度は,1)液晶ゲルの電場応答挙動のダイナミクス,2)液晶ゲルの伸長による液晶再配向挙動,を調べた.1)に関しては,ひずみおよび複屈折変化の電場印加および電場除去時の応答時間を電圧の変数として調べた.電場印加時の光学応答時間は,電圧の2乗に逆比例して変化し,ミリ秒オーダーであった.一方,力学応答時間は,光学応答時間と同様の電圧依存性を示したが約10倍遅いことがわかった.また,電場除去時の両応答時間は電圧に依存しなかったが,電場印加時と同様に力学応答は光学応答よりも約10倍遅かった.これらの実験結果を説明するモデルを構築し,実験結果と良好な一致を得た.2)に関しては,架橋時の液晶相が異なるポリドメイン液晶エラストマー(PNE)を伸長した際に生じるポリドメインーモノドメイン(PM)転移挙動を調べた.等方相で架橋されたPNEは非常に低い一定の応力で転移が生じるのに対し,ネマチック相で架橋されたPNEは転移に要する力学的仕事が前者の10倍以上必要となり,転移は広い応力範囲に渡って徐々に進行した.ネマチック相での架橋は液晶の初期配向の記憶効果によって転移が阻害されることがわかった.一方,等方相で架橋すると,各液晶ドメインは協同的に非常に小さな力で再配向可能であることがわかった.
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