研究概要 |
高度通信情報化にともない放射電磁波の増大・利用周波数領域の多様化が起こるとともに、電磁波の干渉による電子機器の誤作動が懸念されている。本研究の目的は、ナノカーボン粒子のパーコレーション・ネットワークにより、1GHz以上の帯域における吸収性能に優れた電磁波吸収体を創製することである。 1.高分子の共連続構造を利用したナノカーボンのパーコレーション 共連続構造をもつ高分子ブレンドの3次元構造を利用して、直径20nmの導電性カーボンブラックばかりでなく直径150nm,長さ10-20μmのカーボンナノファイバー(VGCF)についてもネットワークを形成させることができた。2成分ブレンドの1成分を高密度ポリエチレンやポリメタクリル酸ブチルなどの屈曲性に富む高分子にすることによって、ナノカーボンを偏在させ、導電性パーコレーションのしきい値を5%以下にすることが可能となった。誘電特性や電磁波吸収性能は現在研究中である。 2.高分子の網目を利用したナノカーボンのパーコレーション 全く異なる発想として、架橋ゴムの3次元網目の網目点間距離をナノカーボンの直径程度に制御することで、ナノカーボンのネットワークを有効に形成できることを見出した。VGCFの場合は高分子網目の粗密は生じるものの分散制御には非常に有効な方法であり、5wt%添加のコンポジットは3-20GHzの周波数で約95%の電磁波吸収性能を示した。 3.カーボンナノファイバーの配列挙動のその場観察 カーボンナノファイバー/反応性シリコーン分散系において、カーボンナノファイバーの電場による配列を行い、その配列挙動のその場でのモニタリングを行った。カーボンナノファイバーの配列挙動と、分散系における見かけの電気特性、例えば、コンダクタンス(誘電損率)との間に相関関係が得られ、その場でのモニタリングに有効であることを示す結果が得られた。
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