研究課題/領域番号 |
18360001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
武藤 俊一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00114900)
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研究分担者 |
足立 智 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10221722)
土家 琢磨 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40262597)
白峰 賢一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10241358)
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キーワード | 核スピン / 電子スピン / メモリ / ヒステリシス / 量子ビット / 量子ドット / 励起子 / 超微細相互作用 |
研究概要 |
本研究課題では、核スピンの重ね合わせ状態をメモリーへ応用することに注目し、そのフィージビリティ研究を行う。すなわち電子スピンを介した、光子-核スピン間の量子ビット変換による量子情報保存が現実的に可能か否かを明らかにする。このためには、電子スピンと核スピンのフリップーフロップにおけるエネルギー変化のない状態、すなわち、外部磁場と核磁場が打ち消しあった状態を形成する必要がある。 昨年度はまず、InAlAs/GaAs量子ドットにおいて励起子による核磁場形成における励起光強度依存性、および励起光の円偏光度依存性を詳細に調べた。その結果、一方の円偏光励起において、励起光強度に対する核磁場の変化にヒステリシスが現れる(いわゆる核スピンスイッチ現象)が見出された。スイッチした先で、外部磁場と核磁場が打ち消し合って、電子スピンと核スピンが同時反転する際の電子の磁気エネルギ変化がない状態が実現しているものと解釈できる。これは、電子-核スピン間のQubit変換に必要な電子スピンが縮退した状態が実現されていることを示唆する。 今年度は、更に磁場強度を変化させた場合について核磁場の双安定動作を確認した。磁場強度を増加させると核磁場は増加するが、或る閾値を超えると不連続に減少する。理論計算との比較の結果、この閾値の直前において、外部磁場と核磁場が完全に相殺する条件が満たされていることが分かった。しかしながら、核磁場は、核スピンの分極形成と分極破壊の釣り合いにより決まっており、完全分極、あるいは核スピンの暗状態(核スピンが飽和した状態)にはないことが分かった。このことは現状では超微細相互作用により電子スピンを核スピン集団の量子状態へ転写することが難しいことを示す。転写の実現には核スピン破壊速度を減少させる、或いは分極形成速度を向上させる必要があることが分かった。
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