研究概要 |
1.タンパク質結晶中のマイクロ欠陥観察について 昨年度に立ち上げたマイクロ欠陥観察装置を用いて,リゾチーム結晶中のマイクロ欠陥のその場観察を行った.そして結晶の成長中に結晶中に取り込まれたマイクロ欠陥からの散乱光を検出する事に成功した.ただ,結晶表面をエッチングして得られる平底型エッチピット(マイクロ欠陥起源)の密度と結晶中で検出されるマイクロ欠陥の密度との定量的な相関関係はまだ得られていない.この問題点を解決するには,1)マイクロ欠陥からの散乱光を光源とする迷光の完全な除去,および2)散乱光強度の基準となる標準試料の作成(ナノ粒子を既知密度で内包するガラス等)が必要であることがわかった. 2.不純物が2次元核形成に及ぼす効果について 種々の濃度が異なる不純物を純度99.99%のリゾチーム過飽和溶液に意図的に加え,レーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いて,リゾチーム結晶表面での2次元核形成速度を系統的に測定した.その結果,高過飽和度下では不純物の種類や濃度によらず均一2次元核形成が進行するが,低過飽和度下では顕著な不均一2次元核形成が進行する事を見出した.また,結晶表面に吸着した不純物が起点となり,結晶表面上の同一の点から3-5回程度2次元核形成が繰り返し起こる事や,微結晶が付着した表面からは多層厚みの2次元アイランドが形成される事も見出した. 3.流れが成長に及ぼす効果について 観察セル内に強制流れを発生させ,純度99.99%および98.5%のリゾチーム過飽和溶液中でのリゾチーム結晶の成長過程をその場観察した.そして,従来,光干渉法を用いた研究で報告されているステップ成長速度の振動は起きない事,流れの効果の本質は不純物の輸送促進にある事,高純度試料溶液中の流れにより引き起こされる成長促進の原因は表面過飽和度の増加ではなく表面の状態変化に伴うステップ密度の増加にあることを明らかにした.
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